不動産会社のサイトを読んでいると、どこにも同じことが書いてあります。
空き家は早く売りましょう、まずは査定を、と。
ただ、実際に査定に出した方はご存じだと思います。
買い手がつかない家は、本当にあります。
駅から遠い、車がないと生活できない、周りも空き家だらけ。
そういう場所の家は、値段を下げても動かないことがあります。
家を売る会社は、この話を正面からは書けません。最後に「うちで売りましょう」と着地させる必要があるからです。
当サイトは家を売っていないので、売れない前提で書きます。
この記事では、処分の選択肢を4つに整理して、それぞれいくらかかるのかを並べました。
- 処分の道は4つある
- 国に引き取ってもらう制度の落とし穴
- 解体を決める前に確認すること
- 田舎の空き家で行き詰まったとき
空き家の処分には4つの道がある
まず全体を並べます。
| 選択肢 | お金の動き | 向いている場合 |
|---|---|---|
| そのまま売る | 入ってくる | 需要のある地域 |
| 買取業者 | 入ってくる(安い) | 売れないが建物が残っている |
| 解体して更地 | 120〜300万円出ていく | 土地に需要がある |
| 国に引き取ってもらう | 解体費+20万円以上出ていく | 相続した土地で他に手がない |
そのまま売る
いちばん望ましい形です。
お金が入ってきますし、手続きも通常の売買で済みます。
ただ、これができるなら、そもそも困っていません。
この記事を読んでいる方は、次の3つのどれかを検討する段階だと思います。
買取業者に引き取ってもらう
ここを飛ばして解体に進む方が多いのですが、先に確かめてほしい道です。
買取業者は、自分で買い取って手を入れて転売します。
そのため、築年数が古くても、傷んでいても買い取ることがあります。
金額は市場価格より安くなります。それでも、お金が出ていく解体とは方向が逆です。
解体した場合と比べて、200万円以上の差が出ることもあるといわれています。
一般の仲介で断られた家でも、買取業者なら話が進むことがあります。
解体を決める前に、一度は聞いてみてください。
解体して更地にする
建物を壊して土地だけにする方法です。
土地に需要がある場所なら、更地のほうが売れやすくなります。
ただし費用がかかります。木造で30坪から50坪なら、120万円から300万円が目安です。
そして、解体はやり直しがききません。
更地にしたのに売れなかった場合、費用だけが出ていって手元には土地が残ります。
国に引き取ってもらう
2023年に始まった相続土地国庫帰属制度という仕組みがあります。
相続した土地を、国に引き取ってもらえる制度です。
「それなら早く使いたい」と思われるはずですが、条件があります。
次の章で詳しく書きます。
国に引き取ってもらう制度の落とし穴
この制度は、期待して調べた方ほどがっかりする部分があります。
建物があると使えない
いちばん大事な点です。
建物が建っている土地は、この制度の対象になりません。
古家でも、小屋でも、もう住めない廃屋でも同じです。
建物が残っているかぎり申請できないので、先に解体する必要があります。
つまり、この制度は「解体したあとの土地の行き先」であって、空き家そのものの出口ではありません。
制度は2023年4月27日から始まっていて、それより前に相続した土地も対象になりえます。
結局いくらかかるのか
お金の話を並べてみます。
| かかるもの | 金額の目安 |
|---|---|
| 建物の解体 | 120万〜300万円(木造30〜50坪) |
| 審査手数料 | 土地1筆につき14,000円 |
| 負担金(宅地) | 原則20万円 |
| 負担金(市街化区域の宅地) | 100㎡で約55万円、200㎡で約80万円の例 |
合計すると、200万円を超えることが珍しくありません。
「国が引き取ってくれる」という言葉から受ける印象とは、だいぶ違うと思います。
もうひとつ注意点があります。
審査手数料は、承認されなかった場合でも返ってきません。
解体してから申請が通らない、という順番になると手詰まりになります。
使えるかどうかは、解体する前に司法書士に確認してください。
ほかに断られる条件
建物以外にも、申請の時点で通らない条件があります。
- 担保権や使用収益権が設定されている土地
- 他人が使う予定のある土地
- 土壌が汚染されている土地
- 境界がはっきりしない土地
- 所有権について争いがある土地
古い実家では、境界が引っかかることがあります。
隣との境界杭がない、測量図が古い、といった状態です。
なお、対象になるのは相続や遺贈で取得した土地です。
個別に使えるかどうかの判断は、当サイトでは踏み込みません。司法書士に相談してください。
解体を決める前に確認すること
解体は、いちばんお金が動く選択です。
決める前に3つだけ確かめてください。
解体費用の相場を知る
木造住宅で、坪単価3万円から5万円が目安です。
30坪から50坪の家なら、120万円から300万円あたりに収まります。
ただ、この金額は条件で動きます。
前の道が狭くて重機が入らない、隣の家と近い、庭木や物置が多い。
こうした条件があると上がります。
費用を抑える方法は3つあるといわれています。
- 自治体の補助金を使う
- 繁忙期(12月から3月)を避けて発注する
- 複数の解体業者から見積もりを取る
家財が残っている場合は、先に片付けたほうが安くなります。処分の費用は遺品整理の費用相場にまとめています。
更地にすると税金が上がる
見落とされやすい点です。
住宅が建っている土地には、固定資産税を軽くする仕組みがあります。
建物を壊して更地にすると、この軽減がなくなります。
つまり、解体費用を払ったうえに、毎年の税金も上がります。
売れる見込みがあるなら問題ありません。
そうでない場合、更地にして持ち続けるのがいちばん重い形になります。
解体は、売り先や引き取り先の見込みが立ってから決めてください。
実際にいくら変わるかは土地ごとに違うので、市区町村の窓口か税理士に確認してください。
補助金は自治体によって違う
空き家の解体に補助金を出している自治体があります。
上限は50万円から300万円と幅が大きく、内容も自治体でかなり違います。
条件がついていることも多いので、そこを先に確かめてください。
- 古い耐震基準の建物だけが対象になっていることがある
- 空き家バンクへの登録が条件になっていることがある
- 申請前に着工すると対象外になる
- 年度ごとの予算枠があり、早く埋まることがある
とくに3つめは要注意です。
業者に頼んでから補助金を調べると、間に合わないことがあります。
調べ先は、空き家がある市区町村の担当課です。
田舎の空き家で行き詰まったとき
売れない、買取も断られた、解体費用も出せない。
その状態の方に向けて書きます。
空き家バンクに登録する
自治体が運営している、空き家と移住希望者をつなぐ仕組みです。
不動産会社が扱わないような物件でも登録できます。
すぐに決まるものではありませんが、登録は無料のことが多く、置いておく損はありません。
先ほど書いたとおり、解体補助金の条件になっている自治体もあります。
0円でも手放す
抵抗のある考え方だと思います。
親が建てた家を、ただで人に渡す。気持ちの面で簡単ではありません。
ただ、金額だけで見ると話が変わります。
持ち続ければ、毎年の固定資産税と管理の手間が続きます。
解体を選べば、100万円単位のお金が出ていきます。
0円で引き取ってもらえるなら、それは損ではなく出費を止める判断です。
引き取り手を探すサービスもありますし、近所の方や親族に声をかけて決まることもあります。
ただし、譲渡には名義の手続きが必要です。そこは司法書士に頼んでください。
放置を選んだ場合に起きること
何もしない、という選択も現実にはあります。
ただ、放っておくと状況は悪くなる方向にしか進みません。
建物は傷み、庭木は伸び、そのうち近隣から苦情が来ます。
管理されていない空き家は、自治体から指導を受けて固定資産税の軽減が外れることがあります。
解体して更地にしたのと同じ状態に、建物が残ったままなってしまいます。
放置のリスクは実家じまいの費用と手順で詳しく書いています。
そして、その状態のまま次の世代に渡ると、同じ悩みをそっくり引き継がせることになります。
空き家の処分に関するよくある質問
よく出てくる疑問をまとめました。
売れない空き家はどこに相談すればいいですか?
まず、空き家がある市区町村の担当課です。
補助金、空き家バンク、相談窓口をまとめて教えてもらえます。費用はかかりません。
そのうえで、買取業者に査定を依頼する流れになります。
解体と買取はどちらが得ですか?
金額の方向だけで見れば、買取のほうが有利です。
解体はお金が出ていき、買取は少なくても入ってきます。
買取を断られたときに、はじめて解体を考える順番がいいと思います。
田舎の家でも買取業者は来てくれますか?
業者によります。
地方の物件を専門に扱う会社もあるので、1社に断られても終わりではありません。
複数に声をかけてみてください。
寄付して引き取ってもらえませんか?
自治体への寄付は、受け付けてもらえないことが多いようです。
使い道のない土地を受け取ると、管理の負担が自治体側に移るためです。
相続した土地であれば、先に書いた国庫帰属の制度が検討先になります。
兄弟で相続した家はどう進めればいいですか?
手続きの前に、全員で方針をそろえてください。
共有になっている不動産は、ひとりの判断では動かせない場面があります。
名義や持分の扱いは司法書士、税金の話は税理士が窓口です。
当サイトでは個別の判断には踏み込みません。
まとめ
空き家の処分で押さえておきたい点をまとめます。
- 処分の道は、売る・買取・解体・国庫帰属の4つ
- 解体を決める前に、買取業者に聞いてみる
- 国庫帰属の制度は、建物があると使えない
- 解体費と負担金を足すと200万円を超えることがある
- 更地にすると固定資産税の軽減がなくなる
- 補助金は自治体差が大きく、着工前の申請が必要
- 行き詰まったら空き家バンクと0円譲渡を考える
- 放置すると軽減が外れ、次の世代に引き継がせる
売れない実家を抱えている方に、きれいな答えは出せません。
どの道を選んでも、お金か手間か気持ちのどれかを差し出すことになります。
ただ、順番だけは間違えないでください。
解体はいちばん最後です。
先に、そのままの状態で引き取ってくれる相手を探す。
それから、自治体の補助金と条件を調べる。
壊すのは、その両方がだめだったときで間に合います。
実家の片付け全体の進め方は実家じまいの費用と手順に、親が元気なうちにできることは生前整理は何から始める?にまとめています。

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