墓じまいのトラブルは順番で防げる|お寺・親族・石材店の揉めどころ

墓じまいで親族・お寺・石材店とのトラブルを防ぐイメージ

墓じまいで揉める人の多くは、揉めるつもりなどありません。

お墓が遠くて管理できない、自分の代で終わりにしたい。

そういう当たり前の事情で動き始めて、気づいたら親族と口をきかなくなっていた。

この記事を書くにあたって競合の記事をひととおり読みましたが、どれも「親族に相談しましょう」と書いてありました。

ただ、なぜみんなその相談を飛ばしてしまうのかは、あまり書かれていません。

理由ははっきりしています。

法律上は、お墓を継いだ人がひとりで墓じまいを決められるからです。

親族全員の同意書は要りません。だから相談しないまま進んでしまいます。

権利があることと、揉めないことは別の話です。

この記事では、誰と何で揉めるのか、そして何を先にやっておけば防げるのかを整理しました。

  • もめる相手は3つに分かれる
  • 親族とは順番で防ぐ
  • お寺とは離檀料と書類
  • 石材店とは見積もりで防ぐ
目次

墓じまいでもめる相手は3つある

墓じまいのトラブルを防ぐため父親と息子が男性の寺院担当者に相談する様子

墓じまいのトラブルは、相手によって性質がまったく違います。

ひとまとめに「トラブル」と考えると対処を間違えます。

親族とのトラブル

感情の問題です。

「勝手に決めた」「先祖に申し訳ない」「なぜ相談しなかったのか」。

お金の話に見えて、実際は置いていかれたと感じたことへの反発であることが多いようです。

3つの中でいちばん修復が難しいのがこれです。

お寺とのトラブル

お金と書類の問題です。

離檀料を高額に請求される、埋葬証明書を出してもらえない、といった形で表れます。

ただし、こちらには対処の手順があります。

感情のもつれと違って、道筋が決まっている分だけ扱いやすい問題です。

石材店とのトラブル

金額の問題です。

見積もりになかった追加費用を請求される、相場よりはるかに高い金額を出される。

3つの中で、事前の準備でいちばん防ぎやすいのがこれです。

ところが、後回しにされやすいのもこれです。

親族とのトラブルは順番で防ぐ

いちばん厄介な親族の話から片付けます。

法律上はひとりで決められる

お墓を継ぐのは、相続人ではありません。

民法897条という条文があり、お墓や仏壇は祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)という立場の人がひとりで引き継ぎます。

誰が承継者になるかは、亡くなった方の指定、それがなければ地域や家の慣習、それでも決まらなければ家庭裁判所が決めることになっています。

そして、墓じまいに親族全員の同意書は法律上必要ありません。

役所に出す書類にも、兄弟のサイン欄などはありません。

つまり、承継者ひとりで手続きを終えられてしまいます。

ここが落とし穴です。

手続きが進むこと自体には誰も反対できないので、そのまま進めてしまう。

そして工事が終わったあとで親族が知り、関係が壊れます。

なお、自分が承継者にあたるのかどうかがはっきりしない場合は、司法書士や弁護士に確認してください。

当サイトでは個別の判断には踏み込みません。

報告ではなく相談の形にする

防ぎ方は単純です。

決める前に話すか、決めてから話すか。

この違いだけで、相手の受け取り方は大きく変わります。

「墓じまいをすることにした」と伝えると、相手は決定を通告されたと感じます。

「墓じまいを考えているのだけど、どう思うか」と聞けば、相手は判断に加われます。

結論が同じでも、後者のほうが揉めません。

話すときに伝えておくとよいことがあります。

  • なぜ墓じまいを考えたのか(距離・体力・後継者)
  • このまま放っておくとどうなるのか
  • 遺骨をどこに移すつもりか
  • 費用がどのくらいかかりそうか

とくに2つめが効きます。

反対する人は、たいてい「そのままでいい」と思っています。

管理料を誰が払い続けるのか、次に誰が墓参りをするのかを具体的に置くと、話が現実に戻ります。

そのうえで、遺骨の移転先だけは相談して決めてください。

ここを勝手に決めると、あとから必ず言われます。移転先の選び方は永代供養で後悔しないためににまとめています。

費用の負担を先に決めておく

お金の話は、あとから持ち出すと角が立ちます。

「賛成してくれたのだから半分出してほしい」は通りません。

賛成と支払いは、相手の中では別のことだからです。

最初の相談の時点で、誰がいくら出すのかまで話しておいてください。

全額こちらで持つなら、それも先に言っておくほうが揉めません。

費用の内訳と相場は墓じまいの費用はいくら?で詳しく書いています。

お寺とのトラブルは離檀料と書類

次はお寺です。

ここは感情ではなく、手順で解ける問題です。

離檀料に法的な支払い義務はない

まず事実を押さえます。

墓地の使用契約や墓地規則に定めがないかぎり、離檀料を払う法的な義務はありません。

お寺を離れること自体も、契約者の権利です。

お寺の側が墓じまいそのものを拒むことはできません。

ただ、ここで気をつけてほしいことがあります。

「義務がない」を最初から前面に出して話すと、まず円満には終わりません。

離檀料は、本来これまでの供養へのお礼として渡されてきたものです。

知識としては持っておいて、話し合いの場では出さない。

これが実務的な構えだと思います。

相場は3万円から20万円ほど

金額の物差しを持っておくと、慌てずにすみます。

金額目安の受け止め方
3万〜20万円一般的な相場の範囲
お布施3回分よく使われる目安(1回3〜5万円なら9〜15万円)
50万〜100万円高額。理由を確認したい水準
100万円超相場から明らかに外れている

宗派として離檀料の金額を決めている取り決めはありません。

だから、お寺によって幅が出ます。

おすすめしたいのは、お寺に行く前に、自分の中で上限額を決めておくことです。

その場で提示された金額に反応すると、判断が感情に引っぱられます。

先に線を引いておけば、「持ち帰って考えます」と言えます。

埋葬証明書を断られたとき

改葬の手続きには、今の墓地の管理者が出す埋葬証明書が必要です。

これを出してもらえないと、書類がそろわず手続きが止まります。

このとき、いきなり弁護士に相談する必要はありません。

先に市区町村の窓口に相談してください。

墓地には許認可を出している行政機関があり、そこから行政指導を求められる場合があります。

また、埋葬証明に準ずる書類を出すことで改葬許可証を交付してもらえないか、役所と相談する方法もあります。

費用はかかりません。

書類の流れそのものは墓じまいの手続きと必要書類にまとめてあります。

弁護士に頼む前に考えること

墓じまいのトラブルを扱う記事の多くは、最後に弁護士への相談を勧めています。

間違いではありません。代理で交渉してもらえますし、法的な整理もしてもらえます。

ただ、ひとつ正直に書いておきます。

依頼にかかる費用が、争っている離檀料を上回ることがあります。

20万円の請求をめぐって、それ以上の弁護士費用を払うことになるなら、何のために争ったのか分からなくなります。

順番としては、こうなると思います。

  • まずお寺と話す(金額の根拠を聞く)
  • 書類を止められたら市区町村へ相談する
  • それでも動かないときに弁護士へ

多くの法律事務所が初回相談を無料にしています。

頼むかどうかは、その無料相談で費用の見込みを聞いてから決めても遅くありません。

石材店とのトラブルは見積もりで防ぐ

3つめは石材店です。

ここは準備しだいで、ほぼ防げます。

指定石材店制度を先に確認する

これを知らないまま進む人が多いところです。

民営霊園や寺院の墓地では、工事できる石材店が決められていることがあります。

指定石材店制度と呼ばれるもので、この場合はその石材店にしか頼めません。

比べる相手がいないので、金額がそのまま通ってしまいます。

通常なら20万円ほどの撤去費用に、40万円以上を請求された事例も報告されています。

墓地の種類石材店を選べるか
公営墓地自由に選べることが多い
民営霊園指定されていることが多い
寺院墓地指定されていることが多い

まずやることは、管理者に「石材店の指定はありますか」と聞くことです。

電話一本で済みます。

指定があった場合でも、打つ手はあります。

ひとつは、ほかの石材店から参考の見積もりを取って相場を知っておくことです。

金額がかけ離れていれば、内訳の説明を求められます。

もうひとつは、入山料を払って外部の業者に入ってもらう方法です。

数万円から10万円程度を管理者に払うことで、認められる場合があります。

追加費用は書面で確認する

墓じまいの見積もりは、あとから金額が動きやすい工事です。

地下の構造は掘ってみないと分からない、という説明は事実です。

ただ、それを理由にした追加請求も起きています。

契約の前に、次の点を確かめておいてください。

  • どこまでが見積もりに含まれているか
  • 追加費用が発生する条件は何か
  • 追加が出るとき、着工前に連絡をもらえるか
  • 墓石の処分費は含まれているか
  • 更地にして返すところまで入っているか

口頭で聞くだけにせず、書面に残してもらってください。

言った言わないになったとき、書面がないと分が悪くなります。

選べる場合は複数社で比べる

公営墓地など、石材店を自由に選べる場合の話です。

このときは、必ず複数の会社から見積もりを取ってください。

墓じまいの工事は定価がなく、同じ墓地の同じ区画でも金額に差が出ます。

1社だけの見積もりでは、それが高いのか安いのか判断できません。

とはいえ、お墓が遠方にあると、石材店を3社探して連絡するだけでも骨が折れます。

一括見積もりのサービスを使うと、一度の入力で複数社の金額を取り寄せられます。

見積もりが並ぶと、金額そのものより内訳の書き方の差が見えてきます。

ひとまとめに「墓じまい一式」とだけ書いてある会社は、あとから動く可能性があります。

墓じまいのトラブルに関するよくある質問

相談の多い疑問をまとめました。

親族が反対したら墓じまいはできませんか?

手続きの上ではできます。

お墓を継いだ人であれば、親族の同意書がなくても改葬の申請は通ります。

ただ、できることと、やっていいことは別です。

関係を保ったまま進めたいなら、時間をかけて話すほうが結局は早くなります。

離檀料を払わないとどうなりますか?

契約や規則に定めがなければ、支払いの法的な義務はありません。

ただし、話がこじれて書類の発行が滞ることはあります。

その場合は市区町村に相談してください。

金額に納得できないときは、争う前に理由を聞くところから始めるほうが穏やかに進みます。

トラブルの相談はどこにすればいいですか?

内容によって窓口が変わります。

書類が出ない、手続きが進まないという相談は、墓地のある市区町村の担当課です。

金額や契約でもめている場合は弁護士、書類作成の代行は行政書士になります。

石材店との契約でおかしいと感じたときは、消費者ホットライン188にも相談できます。

墓じまいをせず放っておくとどうなりますか?

管理料の未納が続くと、最終的に無縁墓として扱われる可能性があります。

遺骨は合祀され、個別に取り出せなくなります。

反対している親族に伝えると、話が進むことがあります。

親族への相談はどこまでの範囲にすべきですか?

決まりはありません。

目安としては、そのお墓に手を合わせに来ている人までです。

年に一度でも墓参りをしている親族がいるなら、その人には伝えたほうがいいと思います。

逆に、何十年も来ていない遠縁まで広げると、話がまとまらなくなります。

まとめ

墓じまいのトラブルを防ぐために、押さえておきたい点をまとめます。

  • もめる相手は親族・お寺・石材店の3つに分かれる
  • 法律上はひとりで決められる。だからこそ先に相談する
  • 「することにした」ではなく「どう思うか」で切り出す
  • 費用の負担は最初の相談で決めておく
  • 離檀料に法的義務はないが、話し合いの場では出さない
  • お寺に行く前に、自分の上限額を決めておく
  • 書類を止められたら、弁護士より先に市区町村へ
  • 石材店の指定があるかを管理者に確認する
  • 選べるなら複数社の見積もりを比べる

墓じまいは、手続きそのものは事務作業です。

書類をそろえて、役所に出して、工事を頼む。それだけです。

難しいのは、その前後にいる人との話のほうだと思います。

私も親の実家の墓をどうするかを考えていますが、まだ誰にも切り出せていません。

ただ、順番だけは決めました。

先に親族、次にお寺、最後に石材店です。

この順番を守るだけで、防げるものはかなりあるはずです。

参考・出典

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この記事を書いた人

終活むすこのアバター 終活むすこ 親の終活に奮闘する40代後半

「おや終活」運営者。40代後半の会社員。親の終活が「ひとごと」でなくなった世代として、墓じまい・遺品整理・実家じまいについて、自分で調べて動いた記録を発信しています。相続や税金など専門判断が必要なことは扱わず、専門家への相談をご案内する方針です。

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