「空き家 活用」で検索すると、アイデアを並べた記事がたくさん出てきます。
カフェ、民泊、シェアハウス、コワーキングスペース、レンタルスペース。
どれも読み物としては面白いのですが、地方の実家を前にすると手が止まります。
駅から遠く、人通りもない場所で、カフェに来る人がいるだろうか。
この違和感は正しいと思います。
アイデアを並べる記事を書いているのは、建てる会社やリフォームの会社です。
どのアイデアが自分の実家では成立しないのかは、その立場からは書けません。
この記事では、活用の選択肢を整理したうえで、田舎で失敗しやすい条件のほうを中心に書きます。
- 活用は大きく4つに分かれる
- 田舎で失敗しやすい3つの理由
- 成功事例をそのまま真似できない理由
- 考える前に確かめること
空き家の活用は大きく4つに分かれる
細かいアイデアは無数にありますが、構造で見ると4つです。
| 選択肢 | 最初にかかるお金 | 引き返しやすさ |
|---|---|---|
| そのまま貸す | 少ない | 引き返しやすい |
| リフォームして貸す | 500万〜2,000万円 | やや難しい |
| 事業に使う | 用途による | 難しい |
| 壊して土地を使う | 解体120万〜300万円 | 戻せない |
この表で見てほしいのは金額よりも右の列です。
下に行くほど、やめたくなったときに戻れなくなります。
そのまま貸す
手を入れずに、現状のまま借り手を探す方法です。
家賃は安くなりますが、初期費用がほとんどかかりません。
借り手が自分で直して住む形もあります。
そして、うまくいかなくても失うものが少ないのが最大の利点です。
空き家バンクに登録して様子を見るのも、この段階に入ります。
リフォームして貸す
住める状態に直してから貸す方法です。
費用の目安は、戸建てで500万円から2,000万円といわれています。
マンションでも250万円から1,000万円ほどかかります。
金額の幅が大きいのは、どこまで直すかで変わるためです。
水回りと屋根をやり直すと、それだけで数百万円になります。
事業に使う
民泊、カフェ、シェアハウス、レンタルスペースなどです。
記事でよく紹介されるのはこの分類ですが、注意点があります。
民泊を例に挙げます。
住宅宿泊事業法にもとづく民泊は、年間180日が営業日数の上限です。
数えるのは実際に宿泊があった日だけで、予約日や空室日は入りません。
期間は4月1日の正午から翌年4月1日の正午までで、暦の1年とはずれています。
180日を超えると旅館業法の無許可営業にあたり、6か月以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になりえます。
営業日数は2か月ごとに報告する義務もあります。
つまり、365日フル稼働を前提にした計算は成り立ちません。
自治体の条例でさらに日数が制限されている地域もあるので、始める前に役所へ確認してください。
建物を壊して土地を使う
解体して、駐車場や資材置き場、賃貸物件の用地として使う方法です。
解体費用は木造30坪から50坪で120万円から300万円が目安になります。
更地にすると固定資産税の軽減が外れる点も含めて、空き家が処分できないときの4つの道に書いています。
この選択肢だけは、決めたら戻せません。
田舎で失敗しやすい3つの理由
ここからが本題です。
そもそも借り手がいない
いちばん単純で、いちばん重い理由です。
活用の話は、借りる人や来る人がいることを前提にしています。
人口が減っている地域では、その前提が崩れます。
周りにも空き家が並んでいる状態なら、賃貸の競争相手が多いということでもあります。
確かめ方は簡単です。
実家の地域名で賃貸物件を検索して、どのくらいの家賃で何件出ているかを見てください。
数が多くて家賃が安いなら、そこが自分の家の上限になります。
リフォーム費用を回収できない
ここが具体的な数字で見える部分です。
仮に800万円かけて直したとします。
家賃が月5万円なら、単純計算で160か月です。13年以上かかります。
しかも、この計算には空室の期間も、その間の固定資産税も、途中の修繕費も入っていません。
初期の改修費が高く、空室が長引くと、回収に長い年数がかかります。
大事なのは、今の傷み具合、見込みの家賃、これからの維持費を並べてから決めることです。
順番が逆になって、リフォームの見積もりを見てから家賃を考えると、たいてい合わなくなります。
なお、実際の収支の判断は税理士や不動産の専門家に見てもらってください。当サイトでは個別の計算には踏み込みません。
用途を絞ると引き返せない
見落とされやすい失敗です。
カフェにするために厨房を入れる。民泊のために部屋を細かく区切る。
こうした改修は、その用途にはぴったり合います。
ところが、うまくいかなかったときに困ります。
用途を限定した改修にお金をかけるほど、別の使い方へ切り替えにくくなります。
普通の住宅として貸そうとしても、間取りが特殊で借り手がつかない。
売ろうとしても、買い手から見れば直す前提の物件になります。
始めるときは、この出口のほうを先に考えておいてください。
成功事例をそのまま真似できない理由
「空き家 活用 成功事例」もよく検索されています。
ただ、事例を読むときには気をつけたい点があります。
補助金が前提になっている
紹介されている成功事例の多くは、自治体の事業として行われたものです。
この記事を書くにあたって検索結果を調べたところ、1位に出てくるのは自治体職員向けのメディアでした。
つまり、読者として想定されているのは個人の所有者ではありません。
補助金や地域の予算が入って成り立っている事例を、個人がそのまま再現するのは前提が違います。
事例を読むときは、いくらの補助が入ったのかを確かめてください。
立地の条件が違う
他の地域でうまくいった方法が、そのまま当てはまるとはかぎりません。
人口、交通の便、観光の需要、周りの競合。条件が違えば結果も変わります。
古民家カフェの成功事例が、観光地の近くだったというのはよくある話です。
事例を見るときは、その場所に人が来る理由があったのかを確かめてください。
動かす人がいる
これがいちばん見落とされます。
カフェにもシェアハウスにも、現地で運営する人が必要です。
実家が遠方にある方の場合、その人をどうするかという問題が残ります。
自分が移住して運営するのか、誰かに任せるのか。
任せるなら、その人件費も計算に入れることになります。
逆にいえば、人手のいらない使い方ほど、遠方の所有者には現実的です。
そのまま貸す、駐車場にする、といった選択肢がこれにあたります。
活用を考える前に確かめること
ここまで厳しい話が続きましたが、打つ手はあります。
先に撤退ラインを決める
この記事でいちばんお伝えしたいことです。
空き家の活用で必要なのは、始められるかどうかの判断だけではありません。
うまくいかなかったとき、どのくらいの損で降りられるかという視点です。
具体的には、始める前に次の2つを決めておきます。
- いくらまでなら出せるか(上限額)
- 何か月借り手がつかなければやめるか(期限)
この2つを紙に書いておくだけで、途中で追加のお金を出し続ける展開を避けられます。
やめると決めたときの出口は、空き家が処分できないときの4つの道にまとめてあります。
自治体と支援法人に相談する
あまり知られていない制度を紹介します。
2023年6月に空家法が改正され、空家等管理活用支援法人という仕組みができました。
市区町村長が、空き家に取り組むNPO法人や社団法人などを指定する制度です。
指定された法人の業務には、次のものが含まれます。
- 所有者への情報提供と相談への対応
- 委託を受けた空き家の定期的な確認や修繕
- 所有者の探索
- 空き家の管理と活用に関する調査や啓発
ただし、まだ広がっている途中の制度です。
施行から8か月の時点で、指定していたのは28の市区町村にとどまっていました。
実家のある自治体にあるかどうかは、空き家の担当課に聞いてみてください。
なければ、担当課そのものが相談先になります。
費用の扱いは法人によって違うので、依頼の前に確認しておくと安心です。
補助金を調べる
空き家の改修に補助金を出している自治体があります。
先ほど、成功事例には補助金が入っていることが多いと書きました。
裏を返せば、補助金を使えば個人でも条件が近づくということです。
内容は自治体でかなり違うので、次の点を確かめてください。
- 空き家バンクへの登録が条件になっていないか
- 移住者に貸すことが条件になっていないか
- 着工前に申請する必要があるか
- 年度ごとの予算枠が残っているか
3つめは特に注意してください。工事を始めてからでは間に合いません。
プランは複数社で比べる
リフォームにしても土地の活用にしても、1社の提案だけで決めないでください。
提案する会社は、自分たちが得意な方法を勧めます。
アパートを建てる会社に相談すればアパートの提案が出ますし、リフォーム会社に聞けばリフォームの提案が出ます。
どちらも嘘ではありませんが、その土地にとって一番いい形かどうかは別です。
複数のプランを並べると、金額よりも先に前提の置き方の違いが見えてきます。
入居率を何パーセントで計算しているか、家賃が何年で下がる前提か。
1社だけ見ていると、その数字が甘いのかどうか判断できません。
空き家の活用に関するよくある質問
よく出てくる疑問をまとめました。
田舎の空き家でも活用できますか?
できる場合もあります。
ただ、都市部と同じ方法では難しいことが多いと思います。
お金をかけない方法から順に試して、反応を見るのが現実的です。
リフォームせずに貸すことはできますか?
できます。
家賃は下がりますが、借り手が自分で直して住む形を望むこともあります。
雨漏りなど住むのに支障がある部分だけを直して、あとは現状のまま、という進め方もあります。
遠方に住んでいても活用できますか?
手のかからない方法を選べば可能です。
そのまま貸す、駐車場にするといった形なら、現地に通う回数を抑えられます。
逆に、人が運営する事業は遠方からだと続きにくくなります。
活用と売却はどちらを先に考えるべきですか?
売れる家なら、売却を先に検討して構わないと思います。
活用は、持ち続けることを選んだ人のための選択肢だからです。
手放す側の選択肢は空き家が処分できないときの4つの道にまとめています。
相談はどこにすればいいですか?
まずは空き家がある市区町村の担当課です。
補助金、空き家バンク、支援法人の有無をまとめて聞けます。
収支の判断は税理士や不動産の専門家、名義の手続きは司法書士が窓口になります。
まとめ
空き家の活用で押さえておきたい点をまとめます。
- 活用は、そのまま貸す・直して貸す・事業に使う・土地を使うの4つ
- 下に行くほど引き返しにくくなる
- 田舎で失敗するのは借り手がいない・回収できない・引き返せないの3つ
- 成功事例には補助金と立地と担い手という前提がある
- 始める前に、上限額とやめる期限を決めておく
- 民泊は年間180日が上限で、暦年とはずれている
- 補助金は着工前の申請が必要なことがある
- プランは複数社を並べて前提の違いを見る
活用という言葉は前向きに聞こえます。
実家を残せるし、収入にもなるかもしれない。手放すより良い選択に思えます。
ただ、活用は持ち続けることでもあります。
うまくいかなければ、お金をかけたうえで、同じ悩みが手元に残ります。
だから、始める前にやめる条件を決めておいてください。
それさえ決めてあれば、試してみる価値はあると思います。
実家の片付け全体の進め方は実家じまいの費用と手順にまとめています。

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