実家の墓を、このまま放っておいたらどうなるのか。
墓じまいには数十万円から百万円以上かかると知って、手が止まっている方は多いと思います。
先にお伝えすると、墓じまいをしなくても罰せられることはありません。
法律で義務づけられているわけではないからです。
ただ、放置してもお墓は消えません。
そして、時間が経つと決まった手続きで無縁墓として扱われ、遺骨は合祀されます。
この記事では、実際に何年でどうなるのか、そのあと遺骨はどこへ行くのかを、公的な調査資料をもとに整理します。
脅すつもりはありません。
ただ、何が起きるかを知らないまま先延ばしにするのと、知ったうえで先延ばしにするのは違うと思うのです。
- 放置したお墓に起きること
- 何年で無縁墓になるのか
- 無縁墓になったあとの流れ
- 管理料の請求は誰に来るのか
- 続けるか、手放すかの決め方
- 墓じまいをして後悔する場合
放置したお墓に起きること
まず、目に見える変化からです。
荒れて、周囲に迷惑がかかる
墓地の区画の手入れは、使用者が行うことになっています。
つまり、誰も来なくなれば、その区画だけが荒れていきます。
総務省が公営墓地を実地調査した資料には、雑草の繁茂、墓石の倒伏、ブロック塀の倒壊が生じている例が挙げられています。
そして、こう書かれています。
荒廃による周辺環境の悪化や近隣の使用者とのトラブル等の原因となりかねない
迷惑がかかるのは、隣の区画を使っている人です。
顔も知らない誰かに、静かに迷惑をかけ続けることになります。
実際に起きている例
同じ資料には、もう少し具体的な例も出てきます。
- 土砂の流出でできた空間に蜂が巣を作り、他の使用者に被害が出た
- 荒廃が進んだ区画に不法投棄が行われていた
- 樹木の伐採のために自治体が毎年度予算を計上していた
- 墓石の倒伏を防ぐため、市町村の職員が防護柵を加工・設置していた
自治体の職員が、他人の墓のために柵を作っている。
放置の負担は、結局どこかの誰かが引き受けています。
災害で倒れることもある
もうひとつ、見落とされがちな話です。
同じ調査によると、平成28年度から令和2年度までの5年間に、公営墓地・納骨堂が地震や豪雨などの災害で被害を受けたことがある市町村は14.2%(109/765市町村)でした。
被災した区画の修繕は、通常は使用者が行います。
誰も来ない墓は、倒れたまま残ります。
何年で「無縁墓」になるのか
ここがいちばん知りたいところだと思います。
全国で決まった年数はない
「何年放置したら無縁墓」という全国共通のルールはありません。
墓地の使用規則と、墓地を管理している側の判断によります。
ただし、判断の目安はあります。
総務省の調査では、自治体がどういう基準で「縁故者がない」と判断しているかが整理されています。
自治体が使っている目安
実際に挙げられていた例です。
| 判断の目安 | 自治体 |
|---|---|
| 管理料の滞納が3年程度で、縁故者が不明 | 秋田県大仙市 |
| 管理料の滞納が10年程度で、戸籍調査でも発見されない | 兵庫県神戸市 |
| 使用者の死亡から5年以内に承継の申出がない | 福島県白河市・兵庫県尼崎市 |
| 使用者が所在不明となり10年が経過 | 同上 |
| 白札を1年以上掲示し、墓参の形跡もない | 石川県小松市 |
| 立札を設置して5年、連絡も墓参の形跡もない | 奈良県御所市 |
短いところでは、管理料の滞納3年程度から動き始めます。
思っているより早い、と感じた方が多いのではないでしょうか。
ただし、この資料には注記があります。
「判断の目安」に該当したことのみをもって、直ちに無縁墳墓等と判断されるものではない
目安に触れたら即座に無縁墓、というわけではありません。
そこから戸籍を調べ、連絡を試み、掲示をして、という手順を踏みます。
半分以上の自治体に無縁墓がある
この問題は、珍しい話ではありません。
総務省の基礎調査によると、公営墓地・納骨堂を持つ765市町村のうち、無縁墳墓等が1区画以上ある(疑いのあるものを含む)のは58.2%でした。
人口規模が大きいほど割合が高くなります。
| 人口規模 | 無縁墳墓等がある市町村の割合 |
|---|---|
| 30万人以上 | 78.9% |
| 10万〜30万人未満 | 65.4% |
| 5万〜10万人未満 | 54.3% |
| 5万人未満 | 55.1% |
大きな市では、8割近くの自治体が抱えています。
自分の家だけの問題ではない、ということです。
無縁墓になったあとの流れ
放置された墓が、どうやって整理されるのか。
官報に載り、立札が1年間立つ
無縁墓の改葬には、法律で決められた手順があります。
墓地埋葬法の施行規則第3条により、墓地の管理者は次のことをします。
- 亡くなった方の本籍・氏名、墓地使用者などの情報を官報に掲載する
- 墓地の見やすい場所に立札を1年間掲示する
そのうえで、その1年の間に申し出がなかったことを示す書類を添えて、改葬の許可を申請します。
つまり、いきなり撤去されるわけではありません。
1年間の猶予があり、その間に名乗り出れば止められます。
ただし、遠方に住んでいれば立札は目に入りませんし、官報を毎日読む人もいません。
気づかないうちに1年が過ぎることは、十分にありえます。
申し出がなければ改葬される
1年が過ぎて誰からも連絡がなければ、改葬の手続きが進みます。
墓石は撤去され、区画は更地に戻されます。
そして、次の使用者に引き継がれます。
このとき、こちらに連絡は来ません。
縁故者がいないという前提で進む手続きだからです。
遺骨は合祀され、戻せなくなる
取り出された遺骨は、合祀墓や合葬墓に移されるのが一般的です。
合祀とは、他の方の遺骨と一緒に埋葬することです。
そして、ここが重要なところです。
合祀されたあとは、特定の誰かの遺骨として取り出すことができません。
「あとで気が変わったから返してほしい」と言っても、物理的に不可能です。
永代供養を選ぶ場合も同じ構造の問題があります。
詳しくは永代供養で後悔しないためににまとめました。
管理料の請求は誰に来るのか
放置を考えるとき、多くの方が気にする点です。
名義人と、そのあとの人
管理料の支払い義務は、墓地の使用契約を結んでいる使用者にあります。
名義人が亡くなった場合、承継した人に移ります。
承継の届出をしていなければ、墓地側は誰に請求すればいいのか分かりません。
だから「使用者が死亡してから5年以内に承継の申出がない場合」という目安が出てくるわけです。
自分に請求が来ていないからといって、問題が消えているわけではありません。
手続きが止まっているだけです。
払わないとどうなるか
管理料を滞納すると、まず督促が来ます。
それでも支払いがなければ、使用規則にもとづいて使用権が取り消される場合があります。
年数は墓地ごとに違います。
まずは、お住まいの、あるいは実家の墓地の使用規則を確認してください。
公営墓地なら自治体のホームページに載っています。
寺院墓地や民営霊園なら、管理事務所に問い合わせます。
続けるか、手放すかの決め方
ここまで読んで、判断に迷っている方へ。
3つの選択肢がある
実際には、二択ではありません。
| 選択肢 | 向いている場合 |
|---|---|
| そのまま維持する | 通える距離で、次に継ぐ人がいる |
| 墓じまいをして永代供養や合祀に移す | 通えない、継ぐ人がいない |
| 近くの墓地へ引っ越す(改葬) | 継ぐ意思はあるが、遠すぎる |
3つめの「引っ越し」を知らない方が意外に多いように感じます。
手放すことと維持することの間に、移すという選択があります。
まず確認すること
判断の前に、事実を集めてください。
- 管理料が今いくらで、支払いが続いているか
- 墓地の使用規則に、承継や取り消しについて何と書いてあるか
- お墓に誰の遺骨が入っているか
- 親族のなかに継ぐ意思のある人がいるか
この4つが分かると、話がかなり具体的になります。
とくに管理料の支払い状況は、放置がどこまで進んでいるかを測る目安になります。
墓じまいを決めたら
墓じまいをすると決めた場合、順番があります。
先に石材店に工事を頼んでしまうと、書類が揃わずやり直しになることがあります。
役所での手続きと必要書類は、墓じまいの手続きと必要書類にまとめました。
費用の目安は、墓じまいの費用はいくら?をご覧ください。
そして、工事の見積もりは複数の石材店から取ってください。
同じ工事でも、金額に差が出ます。
指定石材店の制度がある墓地では選べないこともあるので、そこも先に確認しておくと安心です。
複数の石材店にまとめて見積もりを依頼できるサービスもあります。
全国の優良石材店から一括見積りが無料で出来る【墓石ナビ】親族との進め方でつまずきそうな場合は、墓じまいのトラブルは順番で防げるもあわせてご覧ください。
墓じまいをして後悔する場合もある
ここまで放置の話をしてきましたが、逆の後悔もあります。
手を合わせる場所がなくなる
墓じまいをして合祀に移すと、特定の場所に手を合わせることができなくなります。
合祀墓の前で祈ることはできますが、「うちの墓」ではありません。
管理の負担がなくなる代わりに、行き先を失う。
これを寂しいと感じるかどうかは、人によります。
費用と手間だけで決めると、あとから効いてくる部分です。
納骨堂や樹木葬など、個別に安置される形を選べば、この後悔は避けられます。
あとから親族に言われる
法律上は、祭祀を承継した人ひとりで墓じまいを決められます。
親族全員の同意書は要りません。
だからこそ、相談が飛ばされて揉めます。
「なぜ勝手に決めたのか」と言われるのは、たいてい終わったあとです。
順番の付け方は墓じまいのトラブルは順番で防げるにまとめました。
急いで決めると選択肢が狭まる
管理料の督促が来たり、墓地から連絡が来たりすると、焦ります。
そこで最初に提案されたプランをそのまま受けてしまう。
急いでいるときほど、比べないまま決めてしまいます。
放置が長く続いていたなら、あと1か月は変わりません。
見積もりを取り、行き先を比べる時間を取ってください。
墓じまいをしない場合についてよくある質問
墓じまいをしないと罰則はありますか
ありません。
墓じまいは義務ではなく、しなくても法律上の罰を受けることはありません。
ただし、管理料の滞納が続けば使用権が取り消される場合があり、最終的には無縁墓として改葬されます。
放置していたら、いつの間にか撤去されますか
いきなり撤去されることはありません。
官報への掲載と、墓地に立札を1年間掲示する手続きを経てから改葬されます。
ただし、遠方に住んでいると立札にも官報にも気づかないため、結果として知らないうちに進むことはあります。
墓石をそのままにして、遺骨だけ移せますか
墓地によります。
区画を返す際は更地に戻すのが原則という墓地が多く、その場合は墓石の撤去が必要です。
使用規則を確認するか、管理者に問い合わせてください。
閉眼供養はしないといけませんか
法律上の義務ではありません。
宗教的な儀式なので、行うかどうかは家族の考え方によります。
ただし寺院墓地では、慣例として求められることがあります。
先に菩提寺へ相談しておくと、話がこじれにくくなります。
継ぐ人が誰もいない場合はどうすればいいですか
自分の代で墓じまいをして、永代供養や合祀に移す方法があります。
放置して無縁墓になるのを待つのとの違いは、遺骨の行き先を自分で選べることです。
無縁改葬では行き先を選べません。
まとめ
墓じまいをしないという選択は、それ自体が悪いわけではありません。
ただ、放置は「何も決めていない」のではなく、時間をかけて決まっていくということです。
- 墓じまいをしなくても罰則はない
- ただし放置すると荒れて、隣の区画の人に迷惑がかかる
- 判断の目安は、管理料の滞納3年程度からという自治体もある
- 公営墓地を持つ765市町村の58.2%に無縁墳墓等がある(総務省調査)
- 無縁墓の改葬には、官報掲載と立札1年間という手続きがある
- 1年の間に申し出れば止められるが、遠方だと気づかない
- 遺骨は合祀され、そのあとは取り出せない
- 維持と墓じまいの間に、近くへ移すという選択肢もある
今日できることをひとつ挙げるなら、管理料の支払い状況を確認することです。
通帳の引き落としか、実家に届いている郵便物で分かります。
そこが、すべての判断の出発点になります。

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