墓じまいを進めていくと、必ずここで止まります。
取り出した遺骨を、どこへ納めるのか。
墓石を撤去する話は業者に任せられますが、遺骨の行き先だけは自分で決めなければなりません。
そして、多くの方が知らないことがあります。
取り出した遺骨は、そのままでは次の場所に納められないことがあります。
長く土の中にあった遺骨は、濡れていたり、土が混じっていたりするからです。
この記事では、行き先の選択肢と、その前に必要になる作業を整理します。
- 取り出した遺骨の状態
- 納める前に必要な作業
- 行き先の選択肢
- 費用の目安
- 「不幸になる」と言われたら
- 決めるときの順番
取り出した遺骨の状態
まず、現実の話からです。
骨壺が土に埋まっていることがある
古いお墓では、カロート(納骨室)が地面より下にあります。
長い年月のあいだに土が入り込み、骨壺が半分埋まっていることがあります。
そのため、取り出しに時間がかかります。
半日で終わるつもりが、夕方までかかったという話は珍しくありません。
当日は時間に余裕を持ってください。
数が想定より多いことがある
「祖父母の2人だと思っていたら、6つ出てきた」
これも実際に起きます。
代々のお墓では、記録に残っていない先祖が納められていることがあります。
骨壺の数によって、新しい納骨先の費用が変わります。
納骨堂も樹木葬も、多くは1体ごとの料金だからです。
見積もりを取る前に、何体あるかを確認してください。
分からない場合、石材店や墓地の管理者が把握していることがあります。
骨壺がない地域もある
関西では、骨壺に入れず、さらしの袋で納骨する地域があります。
また、火葬後に全部の骨を拾わない地域もあります。
関東は全部を拾う「全収骨」、関西は一部を拾う「部分収骨」が一般的とされます。
そのため、関西のお墓は骨壺が小さく、関東は大きいという違いが出ます。
新しい納骨先が別の地域にある場合、骨壺のサイズが合わないことがあります。
納める前に必要な作業
ここが、あまり書かれていない部分です。
乾燥と洗浄
土の中にあった遺骨は、水分を含んでいます。
そのまま新しい納骨先に持ち込むと、断られることがあります。
カビや臭いの原因になるためです。
対応は、石材店や専門の業者が行います。
- 天日で乾かす
- 洗浄して汚れを落とす
- 混ざった土を取り除く
自分でやろうとしないでください。
遺骨は思っているよりもろく、扱いに慣れが要ります。
粉骨
遺骨を細かい粉状にする作業です。
次の場合に必要になります。
- 散骨する(法律上、粉状にすることが求められています)
- 手元供養の小さな容器に納める
- 樹木葬で、袋に入れて埋葬する形式
- 複数の遺骨をひとつにまとめる
粉骨すると、体積が3分の1から5分の1程度まで小さくなります。
骨壺が6つあっても、まとめれば1つに収まることがあります。
新しい納骨先の費用を抑える方法としても使われます。
骨壺の入れ替え
納骨先によって、受け入れられる骨壺の大きさが決まっています。
納骨堂は特に、寸法の指定があることが多いところです。
- 「7寸までしか入りません」
- 「専用の骨壺に移してください」
契約する前に、いま持っている骨壺のサイズを伝えて確認してください。
当日になって入らないと分かると、その場で動けません。
行き先の選択肢
ここからが本題です。
永代供養墓・合祀墓
他の方の遺骨と一緒に埋葬する形です。
管理を寺院や霊園に任せられ、費用がいちばん抑えられます。
ただし、決定的な特徴があります。
一度合祀すると、取り出せません。
「やはり手元に置きたい」と思っても、物理的に不可能です。
きょうだいや親族の同意を取ってから決めてください。
あとで「相談されていない」となったとき、戻せません。
判断の材料は永代供養で後悔しないためににまとめました。
納骨堂
屋内に個別で安置する形です。
- 天候に関係なくお参りできる
- 駅から近い施設が多い
- 掃除や草取りが要らない
ただし、多くは安置期間が決まっています。
13回忌、33回忌といった区切りで、そのあとは合祀に移されるのが一般的です。
「永代」という言葉が付いていても、個別安置が永久に続くとは限りません。
契約前に、安置期間と、そのあとどうなるかを必ず確認してください。
樹木葬
樹木や草花を墓標とする形です。
個別に区画があるタイプと、最初から合葬するタイプがあります。
この2つは費用も性質もまったく違います。
「樹木葬」という同じ名前で案内されるので、契約書で確認してください。
屋外なので、天候や季節によってお参りしにくい時期があります。
散骨
粉状にした遺骨を、海や山に撒く方法です。
遺骨を残さない選択なので、あとから戻せません。
そして、注意点があります。
- 粉骨が必要(そのままの形で撒くことはできません)
- 撒く場所に制限がある(他人の土地、漁場、海水浴場の近くなど)
- 自治体によっては条例で規制している
全部を撒かず、一部を手元に残す方も多くいます。
参る場所がなくなることを、あとから寂しく感じる場合があるためです。
手元供養・自宅安置
自宅に置いておく形です。
これは法律上、問題ありません。
「遺骨を自宅に置いてはいけない」という決まりはなく、期限もありません。
墓地以外の場所に「埋める」ことが禁じられているだけで、保管は自由です。
- 小さな骨壺に移して仏壇のそばに置く
- ペンダントやプレートに一部を納める
- 残りは納骨し、一部だけ手元に残す
決めきれないときの、いったんの置き場所としても使えます。
急いで合祀してしまうより、家に置いて考えるほうが安全です。
費用の目安
金額の感覚です。
| 行き先 | 費用の目安 |
|---|---|
| 合祀墓 | 3万〜30万円 |
| 樹木葬 | 20万〜80万円 |
| 納骨堂 | 20万〜150万円 |
| 散骨(代行) | 3万〜10万円 |
| 散骨(同行) | 20万〜30万円 |
| 手元供養の容器 | 数千〜数万円 |
| 粉骨 | 1体2万〜5万円 |
| 洗浄・乾燥 | 1体1万〜3万円 |
遺骨の数だけ費用がかかる点に注意してください。
6体あれば、多くの項目が6倍になります。
ここで合計が想定を超えることが多くあります。
墓じまい全体の費用は墓じまいの費用はいくら?にまとめました。
「墓じまいすると不幸になる」と言われたら
遺骨の行き先を決める段階で、こう言われることがあります。
誰が言っているのか
「先祖を粗末にすると罰が当たる」
「墓を壊すと家が絶える」
こうした言い方に、根拠はありません。
罰を与える仕組みがどこかにあるわけではなく、統計があるわけでもありません。
そして、多くの場合言っているのは、その墓を管理していない人です。
管理料を払い、草を取り、遠方から通っている人が言うことは、あまりありません。
負担を引き受けていない側からのほうが、強い言葉が出てきます。
反対されたときの受け止め方
とはいえ、正面から反論しても収まりません。
言葉の裏にあるのは、たいてい寂しさだからです。
自分が育った家の墓がなくなる。
その事実に、まだ気持ちが追いついていない。
「不幸になる」は、その気持ちが形を変えて出てきた言葉であることが多いように思います。
有効なのは、議論ではなく情報です。
- 管理料がいくらかかっているか
- 誰が何年通っているか
- このまま放置するとどうなるか
数字と事実を出すと、話が現実的になります。
放置した先に何が起きるかは、墓じまいをしないとどうなる?にまとめました。
そして、手を合わせる場所を残す形にすると、反対は和らぎます。
合祀ではなく納骨堂にする、一部を手元に残す。
「なくす」のではなく「移す」と伝えると、受け取られ方が変わります。
決めるときの順番
最後に、進め方です。
遺骨の数を確認する
すべてはここから始まります。
数が分からないまま見積もりを取っても、金額が確定しません。
墓地の管理者、石材店、親族に聞いて、何体あるかを把握してください。
戻せるかどうかで分ける
選択肢は、この基準で2つに分かれます。
| 戻せる | 戻せない |
|---|---|
| 納骨堂(個別安置の期間内) | 合祀 |
| 樹木葬(個別区画) | 散骨 |
| 手元供養 | 樹木葬(合葬タイプ) |
迷っているなら、戻せる側を選んでください。
あとから合祀や散骨に移すことはできますが、その逆はできません。
「とりあえず合祀」がいちばん危ない判断です。
親族に先に相談する
法律上は、祭祀を承継した人ひとりで決められます。
親族全員の同意書は要りません。
だからこそ、相談が飛ばされて揉めます。
とくに散骨と合祀は、あとから「聞いていない」と言われても戻せません。
日程が決まった段階で、一度連絡を入れておいてください。
進め方は墓じまいのトラブルは順番で防げるに書きました。
墓じまいの遺骨についてよくある質問
遺骨を自宅に置いておいてもいいですか
問題ありません。
法律で禁じられているのは、墓地以外の場所に埋めることです。
保管に期限もありません。
骨壺が6つ出てきました。まとめられますか
粉骨すれば、ひとつにまとめられます。
体積が3分の1から5分の1程度になるため、納骨先の費用も抑えられます。
ただし、まとめたあとで個別に分けることはできません。
散骨は自分でやってもいいですか
粉状にすることと、撒く場所への配慮が必要です。
自治体によっては条例で規制しているため、事前に確認してください。
不安であれば、専門の業者に依頼する方法があります。
遺骨の一部だけ手元に残せますか
できます。
一部を小さな容器やペンダントに納め、残りを納骨する方が多くいます。
参る場所と、手元に置くものの両方を持てる形になります。
納骨先が決まっていませんが、墓じまいを進めていいですか
改葬許可の申請には、新しい納骨先の受入証明書が必要になるのが通例です。
先に納骨先を決めないと、手続きが進みません。
必要書類は墓じまいの手続きと必要書類にまとめました。
まとめ
遺骨の行き先は、費用より先に「戻せるか」で考えてください。
- 取り出した遺骨は濡れている・土が混じっていることがある
- そのままでは納められず、洗浄・乾燥が必要な場合がある
- 骨壺の数が想定より多いことがある。費用は数に比例する
- 納骨堂は骨壺の寸法指定があることが多い
- 散骨と、小さな容器への納骨には粉骨が必要
- 合祀と散骨は戻せない
- 納骨堂の「永代」でも、個別安置には期限があることが多い
- 手元供養は法律上問題ない。期限もない
- 迷っているなら戻せる側を選ぶ
- 「とりあえず合祀」がいちばん危ない
- 「不幸になる」に根拠はない。議論より数字と事実を出す
今日できることをひとつ挙げるなら、お墓に何体の遺骨が入っているかを確認することです。
そこが分からないと、費用も行き先も決められません。
当日の流れは墓じまい当日の服装と持ち物にまとめています。

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