親が80歳を超えた。
お墓のこと、保険のこと、通帳の場所。
聞いておかないとまずい、とは思っています。
でも、口に出せません。
「終活」と言った瞬間に、場の空気が変わるのが分かるからです。
この記事では、切り出し方のコツを並べません。
切り出さずに済ませる方法を書きます。
先にお伝えしておきたいことがあります。
親が嫌がるのは、当たり前です。
こちらの伝え方が下手だからではありません。
- 親が嫌がるのは当たり前
- 「終活」という言葉を使わない
- 子が先に書くという手
- 聞いた内容をどこに残すか
- 聞いておきたいことは4つだけ
- それでも話せないとき
親が嫌がるのは当たり前
まず、ここを認めるところから始めます。
自分がいなくなる前提の話だから
終活の話は、突き詰めると「あなたが亡くなったあと」の話です。
どれだけ言葉を選んでも、その前提は消えません。
元気に暮らしている人に、いなくなったあとの相談をしているわけです。
嫌がられないほうが不自然だと思います。
上位に出てくる記事の多くは「嫌がられない切り出し方」を教えてくれます。
ただ、嫌がられない方法があるという前提そのものに、少し無理があります。
「まだ元気だ」は拒否ではない
親から返ってくる言葉は、だいたい決まっています。
「まだ早い」
「縁起でもない」
「そのときになれば分かる」
これを拒否と受け取ると、次が出せなくなります。
多くの場合、これは「今日はその話をしたくない」という意味です。
永久に話さない、という宣言ではありません。
日を改めれば、違う反応が返ってくることがあります。
嫌がられたのは失敗ではない
一度切り出して嫌な顔をされると、二度目が怖くなります。
でも、そこで話が終わったわけではありません。
親のほうも、言われたこと自体は覚えています。
そして、しばらくしてから自分で考え始めることがあります。
「この前の話だけど」と親から言い出す、というのは実際にあることです。
種をまいた状態だと考えて、いったん引いて構いません。
「終活」という言葉を使わない
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
言葉が身構えさせる
「終活」は、意味が広すぎる言葉です。
そして、「終」という字が入っています。
親の世代にとっては、テレビや雑誌で「そろそろ準備を」と言われ続けてきた言葉でもあります。
聞いた瞬間に、身構えます。
その一語を外すだけで、会話が続くことがあります。
具体的な用事から入る
代わりに使うのは、目の前の用事です。
こちらは死の話になりません。
| 入り口 | 実際に聞けること |
|---|---|
| お墓の管理料の引き落とし | 菩提寺・霊園の連絡先、名義 |
| 火災保険や地震保険の更新 | 保険会社、証券の場所 |
| スマホの機種変更を手伝う | 契約内容、暗証番号の管理 |
| 通帳の記帳を手伝う | 取引のある銀行 |
| 車の免許の更新 | 返納の意向、車の処分 |
どれも「今」の用事です。
「お墓の管理料って、どこから引き落とされてるの」と聞くのは、終活の話ではありません。
ただの事務の確認です。
それでも、聞けている内容は終活とほぼ同じです。
こちらのほうが、親も答えやすくなります。
ニュースや他人の話を借りる
自分の家の話として持ち出すと、重くなります。
そこで、他人の話を借ります。
- 「会社の同僚が、親の口座が分からなくて大変だったらしい」
- 「テレビでやってたけど、家の名義って調べておかないと面倒なんだって」
- 「友達が実家の片付けで、通帳が出てきて焦ったって」
主語が自分の家でなければ、親も構えません。
そして、そのあとにひとこと添えます。
「うちはどうなってるんだろうね」
これなら、迫っている感じになりません。
一度に全部聞かない
一度の帰省で全部聞こうとすると、尋問になります。
1回につき1項目で十分です。
今回はお墓の連絡先。
次はどの銀行を使っているか。
その次は保険。
年に数回の帰省でも、3年あれば一通り揃います。
急がないほうが、結果的に早く集まります。
子が先に書くという手
意外に効くのが、この方法です。
順番を逆にする
親に書いてもらうのではなく、自分が先に書きます。
40代・50代でも、書けることはあります。
保険、住宅ローン、加入しているサブスク、スマホのパスワードの在り処。
そのうえで、こう言います。
「自分が書いてみたんだけど、意外と分からないことが多かった」
これは、お願いではなく報告です。
親に何かを求めていないので、身構えられません。
そして、多くの場合ここで親が興味を示します。
「へえ、そういうの書くんだ」
渡すのではなく、見せる
エンディングノートを買って渡すと、「書け」という意味になります。
押しつけになると、置かれたまま何年も経ちます。
代わりに、自分が書いたものを見せてください。
無料で手に入るものもあります。
法務省と日本司法書士会連合会が公開しているものは、公的機関が作っているので営業の連絡先が入っていません。
選び方はエンディングノートは何を書く?にまとめました。
親が「自分も書こうかな」と言い出すまで、待って構いません。
言い出さなければ、次の項目を聞き取りで埋めていけば足ります。
聞いておきたいことは4つだけ
全部を聞く必要はありません。
お金の置き場所
金額ではありません。
「どこにあるか」だけです。
- 取引のある銀行
- 通帳と印鑑の場所
- 保険に入っているか、入っているならどこか
金額を聞くと、財産を探られていると受け取られます。
「いくらあるか」は聞かなくて構いません。
場所さえ分かれば、いざというときに動けます。
お墓と菩提寺
これは、こちらが困る度合いがいちばん大きい項目です。
- お墓がどこにあるか
- 管理料をどこに払っているか
- 菩提寺の名前と連絡先
- 継ぐつもりがあるかどうか
分からないまま親が亡くなると、探すところから始まります。
お墓をどうするかで迷いが出たときは、墓じまいをしないとどうなる?が判断の材料になります。
入院したときの希望
重い話に聞こえますが、入り口を変えれば聞けます。
「もし入院することになったら、誰に連絡すればいい?」
これは終末期の話ではなく、入院の手続きの話です。
そこから、延命の希望などに話が及ぶことがあります。
及ばなければ、それで構いません。
医療や介護の具体的な判断は、地域包括支援センターに相談できます。
連絡してほしい人
親の交友関係は、子には見えません。
年賀状の束や、携帯電話の連絡先を一緒に見るだけでも違います。
「もしものときに知らせてほしい人はいる?」
これは、家族葬にする場合にそのまま効いてきます。
誰を呼ぶかで迷う話は、家族葬はどこまで呼ぶ?にまとめました。
聞いた内容をどこに残すか
聞けたのに、どこに書いたか分からなくなる。
これが意外と起きます。
自分のスマホのメモで止めない
その場でスマホにメモを取るのは自然な動きです。
ただ、そこで止めると自分にしか見えません。
自分が先に倒れる可能性もありますし、きょうだいが同じことを親に聞いて、二度手間になることもあります。
- 家族で共有できる場所に置く
- きょうだいにも見えるようにしておく
- 紙で1枚にまとめて、実家にも1部置く
「誰が持っているか」まで決めて、はじめて記録になります。
エンディングノートを使うなら、親に書いてもらう用とは別に、自分が聞き取りをまとめる用として使う手もあります。
書いてはいけないこと
一方で、書き残さないほうがいいものもあります。
暗証番号、キャッシュカードの番号、ネット銀行のパスワード。
これらを一覧にして家に置くのは危険です。
書くのは「どこにあるか」までにしてください。
- 銀行名は書く/口座番号と暗証番号は書かない
- 保険会社は書く/証券番号は原本を見れば分かる
- 通帳の保管場所は書く/中身の金額は書かない
在り処さえ分かれば、いざというときに動けます。
国民生活センターは、スマートフォンのパスワードについて「名刺大の紙に書いて修正テープで隠しておく」という方法を紹介しています。
デジタル関係の詳しい話は遺品整理を自分でやるか決める前にに書きました。
それでも話せないとき
うまくいかないこともあります。
きょうだいから話してもらう
親子には相性があります。
自分が言うと角が立つのに、きょうだいが言うと通ることがあります。
説得役を代わってもらうのは、負けではありません。
嫁や婿の立場では、さらに言いにくくなります。
その場合は、実の子から話してもらってください。
親の親の話をする
親自身も、かつて自分の親を送っています。
「おじいちゃんのときは、どうだったの」
この質問なら、親は語り手になります。
自分が困った経験を思い出して、そこから「うちも決めておかないとな」と続くことがあります。
過去の話は、未来の話より入りやすい入り口です。
話せなくても、できることはある
最後に、これだけはお伝えしておきたいことがあります。
何も聞けなくても、詰みではありません。
親が亡くなったあとでも、調べられることは多くあります。
通帳は郵便物から辿れますし、保険は生命保険協会に照会する仕組みがあります。
聞けなかったことを、自分の落ち度だと思わないでください。
そのときが来てからやることは、遺品整理を自分でやるか決める前にに書きました。
実家のモノをどうするかで迷っているなら、実家の片付けにうんざりしたらもあわせてご覧ください。
親の終活の話し方についてよくある質問
親に「縁起でもない」と怒られました
その日はそこで引いて構いません。
多くの場合、永久に拒否しているのではなく「今日はしたくない」という意味です。
日を改めて、終活という言葉を使わずに具体的な用事から入り直してみてください。
何歳くらいから話すべきですか
決まりはありません。
ただ、親が元気なうちのほうが、事務的な話として扱えます。
年代ごとの考え方は終活は何歳から始める?にまとめました。
エンディングノートを買って渡してもいいですか
渡すだけだと、置かれたままになりやすいところです。
自分が先に書いて、それを見せるほうが動いてもらいやすくなります。
財産の金額は聞いておくべきですか
金額よりも、どこにあるかのほうが大事です。
金額を聞くと財産を探られていると受け取られやすく、話が止まる原因になります。
きょうだいで意見が合いません
先に、聞き取った内容だけを共有してください。
どうするかの判断より、事実の共有が先です。
情報が揃っていないうちに方針を決めようとすると、揉めます。
まとめ
切り出せないなら、切り出さなくて構いません。
- 親が嫌がるのは当たり前。いなくなる前提の話だから
- 「まだ早い」は拒否ではなく「今日はしたくない」
- 「終活」という言葉を使わない
- 代わりに具体的な用事から入る(管理料、保険の更新、スマホ)
- ニュースや他人の話を借りると、主語が自分の家にならない
- 1回につき1項目。3年あれば揃う
- 子が先に書いて、見せる。渡すと押しつけになる
- 聞くのは4つ。お金の置き場所・お墓と菩提寺・入院時の希望・連絡してほしい人
- 金額は聞かなくていい
- 何も聞けなくても、詰みではない
今日できることをひとつ挙げるなら、次に電話したときに「お墓の管理料ってどこから引き落とされてるの」と聞いてみることです。
終活の話には聞こえません。
でも、これが入り口になります。

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