遺品整理の費用は誰が払う?相続放棄を考えているなら、片づける前に

親を見送ったあと、遺品整理の話になって手が止まることがあります。

誰が払うのか。

きょうだいで折半なのか、実家にいちばん近い人が持つのか、喪主が出すのか。

先にお伝えすると、遺品整理の費用を誰が払うかを直接定めた法律はありません。

だから揉めます。

そしてもうひとつ、順番の問題があります。

親に借金がありそうで相続放棄を考えているなら、片づけを始める前に止まってください。

遺品を処分すると、相続を引き受けたとみなされることがあります。

この記事では、費用の負担の考え方と、相続放棄との関係、そして2023年に変わった「放棄したあとの義務」までを整理します。

なお、この記事は制度の枠組みを説明するものです。

個別の判断は、弁護士や司法書士にご相談ください。

  • 費用を誰が払うかに決まりはない
  • 相続放棄を考えているなら片づけない
  • 2023年に変わった放棄後の義務
  • 賃貸の部屋だった場合
  • 揉めないための順番
目次

遺品整理の費用を誰が払うかに、決まりはない

ここが揉めごとの出発点です。

法律に負担者の定めはない

葬儀費用や遺品整理費用を「誰が負担するか」を直接定めた条文はありません。

だから、家庭ごとに事情で決まります。

実家の近くに住んでいる人が動くことになり、そのまま費用も持つ。

そういう流れになりやすいのですが、動いた人が払うという決まりはどこにもありません。

ここを曖昧にしたまま作業を始めると、あとから「聞いていない」という話になります。

原則は相続財産から

考え方としては、遺品整理の費用は相続財産から支払うのが一般的とされています。

故人が残したお金で、故人の持ち物を片づける、という整理です。

相続財産で足りない場合は、相続人が負担することになります。

相続人が複数いるなら、相続分に応じて分けるのが原則です。

ただし、これは「そう考えるのが自然」という話であって、強制力のあるルールではありません。

きょうだいの間で合意ができるなら、別の分け方でも構いません。

実際には誰かが立て替えることになる

現実には、遺産の分け方が決まる前に片づけが必要になります。

賃貸なら明け渡しの期限がありますし、家を売るなら引き渡しの日が決まります。

そこで誰かが立て替えることになります。

このとき必ずやっておいてほしいことがあります。

  • 業者の見積書と領収書を保管する
  • 支払った人と金額を、きょうだいに共有しておく
  • 相続財産から精算するのか、各自が分担するのかを口頭でも決めておく

領収書がないと、あとで精算する話ができません。

金額が大きいほど、記録の有無が効いてきます。

相続放棄を考えているなら、片づける前に止まる

ここがこの記事でいちばんお伝えしたいところです。

遺品を処分すると相続を認めたことになる

民法921条では、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなすとされています。

単純承認とは、借金も含めて全部を引き継ぐという意味です。

つまり、片づけたことによって、相続放棄ができなくなる可能性があります。

親に借金があるかどうか分からない段階では、まず財産と負債の全体像を確かめてください。

片づけはそのあとです。

順番を逆にすると、戻せません。

売って代金を受け取るのが最も危ない

処分にあたる行為のなかでも、はっきりしているのがこれです。

価値のある遺品を売って、代金を受け取ること。

着物、骨董品、貴金属、車。

「どうせ捨てるものだから」と思って買取に出すと、相続を引き受けたと判断される可能性があります。

形見分けも、経済的な価値のあるものを持ち帰る場合は同じ問題が出てきます。

一方で、傷んだ衣類など価値のないものの廃棄は、処分にあたらないと考えられています。

ただ、どこまでが「価値がない」のかを自分で判断するのは危険です。

相続放棄を少しでも考えているなら、何かを動かす前に弁護士か司法書士に確認してください。

期限は3か月

相続放棄の申述は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です。

裁判所の案内では、この期間内に調査しても判断がつかない場合、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立て」ができるとされています。

費用は収入印紙800円(申述人1人につき)と、連絡用の郵便切手です。

3か月は、思っているより短い期間です。

葬儀と各種手続きに追われているうちに過ぎてしまいます。

迷っているなら、まず伸長の申立てを検討してください。

2023年に変わった「放棄したあとの義務」

ここは古い情報が残りやすいところです。

改正前は管理義務が残るとされていた

以前は、相続放棄をしても、次の相続人に引き渡すまで財産を管理する義務が残るとされていました。

「放棄したのに実家の管理を続けなければならない」という話は、ここから来ています。

いまも、そう書いたままの記事が残っています。

いまは「現に占有している」場合だけ

2023年4月1日施行の改正で、条文が変わりました。

現在の民法940条1項は、次のとおりです。

相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

変わったのは2点です。

改正前改正後
義務の呼び方管理義務保存義務
対象放棄した財産全般とされていた放棄の時に現に占有しているもの

「現に占有している」とは、放棄の時点で実際にその財産を持っている、あるいはそこに住んでいる状態を指すと説明されています。

たとえば、親と同居していた子が実家を放棄する場合は、これにあたります。

一方、遠方に住んでいて実家の管理に関わっていなかった場合は、あたらないと説明されています。

つまり、実家に住んでいない子が相続放棄をしたなら、原則として家財を保存する義務は負いません。

改正前の説明だけを読んで「放棄しても管理を続けなければならない」と思い込む必要はありません。

なお、あてはまるかどうかは事情によります。

自分のケースがどちらなのかは、専門家に確認してください。

義務がある場合の外し方

同居していたなどで保存義務がある場合、義務はいつまでも続くわけではありません。

条文にあるとおり、他の相続人か、相続財産清算人に引き渡すまでです。

引き渡す相手がいないときは、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てる方法があります。

申立てには予納金が必要になることがあり、金額は家庭裁判所の判断によります。

ここも、手続きの要否を含めて専門家に相談する場面です。

賃貸の部屋だった場合

持ち家より難しいのが、こちらです。

放棄すると家財を片づけられない

故人が賃貸に住んでいて、相続放棄を考えている場合。

部屋の中の家財を片づけることは、処分にあたる可能性があります。

つまり、「放棄したいけれど、部屋も空けなければならない」という板挟みになります。

自分で片づけてしまうと放棄ができなくなり、放置すれば家賃が発生し続けます。

この状態は、自力で解決できません。

放棄を考えているなら、部屋には手をつけず、先に専門家へ相談してください。

大家さんとは早めに話す

事情を伝えないまま時間が過ぎると、話がこじれます。

相続放棄を検討していること、手続きに時間がかかることを、早い段階で伝えておいてください。

黙って放置するのがいちばん良くない対応です。

賃貸借契約は借りていた方が亡くなっても自動的には終わらないため、大家さんの側も困っています。

先に状況を共有しておけば、進め方の相談ができます。

揉めないための順番

最後に、実際の進め方を整理します。

1. 財産と負債を確かめる

通帳、郵便物、契約書。

借金の手がかりは郵便物に出ます。

督促状や、聞いたことのない会社からの請求書が届いていないかを確認してください。

この段階では、まだ何も捨てません。

2. 放棄しないと決めてから片づける

相続を引き受けると決めたら、そこから片づけを始めます。

この順番だけは崩さないでください。

判断がつかないまま3か月が近づいたら、期間の伸長を検討します。

実際の片づけの進め方は、遺品整理を自分でやるか決める前ににまとめました。

自治体のごみ収集のルールが作業日数を決めているので、先に読んでおくと計画が立てやすくなります。

3. 費用の分担は先に話す

作業を始める前に、きょうだいで金額の見当をつけておいてください。

いくらかかるか分からないままでは、分担の話ができません。

間取り別の費用の目安は、遺品整理の費用相場は?間取り別の目安と業者選びの注意点にまとめています。

実際の金額は、荷物の量と建物の条件で大きく変わります。

見積もりを取っておくと、話が具体的になります。

複数の業者にまとめて依頼したい場合は、一括見積もりのサービスがあります。

ぽいみつは、遺品整理や空き家の片付けに対応した業者へ、一度の入力で見積もりを依頼できるサービスです。運営は株式会社ロイドで、会員登録は不要、見積もりまでは無料です。

申し込むと、対応できる業者から電話がかかってきます。

契約は紹介された業者と直接結ぶ形になるので、金額と作業範囲は必ず書面で確認してください。

なお、相続放棄を考えている段階では、見積もりだけにとどめてください。

作業を始めてしまうと、処分にあたる可能性があります。

遺品整理の費用と相続放棄についてのよくある質問

遺品整理の費用は長男が払うものですか

そういう決まりはありません。

負担者を直接定めた法律はなく、相続財産から支払うか、相続人が相続分に応じて分けるのが一般的な考え方です。

慣習として長男が動く家庭は多いのですが、費用まで長男が持つ義務はありません。

立て替えた費用は、あとから請求できますか

相続財産から精算する形にできる場合があります。

ただし、見積書と領収書が残っていることが前提です。

金額と支払った人を、早い段階できょうだいに共有しておいてください。

相続放棄をしたら、遺品整理はしなくていいのですか

原則として、その義務はありません。

ただし、放棄の時にその財産を現に占有していた場合は、引き渡すまでの保存義務があります(民法940条1項)。

自分がどちらにあたるかは、専門家に確認してください。

位牌や写真を持ち帰るのも処分になりますか

経済的な価値がないものであれば、処分にはあたらないと考えられています。

とはいえ、判断を自分でするのは危険です。

相続放棄を考えているなら、持ち帰る前に確認してください。

遺品整理の費用を抑える方法はありますか

複数の業者から見積もりを取ること、買取できるものを分けておくことが基本です。

自分でできる範囲を切り分けて頼む方法もあります。

詳しくは遺品整理の費用相場は?をご覧ください。

まとめ

遺品整理は、片づけの前に決めることがあります。

  • 費用の負担者を定めた法律はない。だから先に話しておく
  • 原則は相続財産から。足りなければ相続人が相続分に応じて負担する
  • 立て替えたら見積書と領収書を残す
  • 相続放棄を考えているなら、片づける前に止まる(民法921条)
  • とくに、売って代金を受け取る行為が危ない
  • 相続放棄の期限は3か月。迷うなら期間の伸長を検討する
  • 2023年4月の改正で、放棄後の保存義務は「現に占有している」場合に限られた(民法940条1項)
  • 遠方に住んでいて管理に関わっていなければ、原則として義務は負わない
  • 賃貸は板挟みになりやすい。手をつける前に専門家へ

今日できることをひとつ挙げるなら、実家に届いている郵便物を確認することです。

借金の有無は、そこにいちばん早く表れます。

そして繰り返しになりますが、この記事は制度の枠組みを説明するものです。

放棄すべきかどうか、この行為が処分にあたるかどうかは、弁護士や司法書士にご相談ください。

家そのものをどうするかで迷っている場合は、実家じまいの費用と手順もあわせてご覧ください。

参考・出典

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

終活むすこのアバター 終活むすこ 親の終活に奮闘する40代後半

「おや終活」運営者。40代後半の会社員。親の終活が「ひとごと」でなくなった世代として、墓じまい・遺品整理・実家じまいについて、自分で調べて動いた記録を発信しています。相続や税金など専門判断が必要なことは扱わず、専門家への相談をご案内する方針です。

コメント

コメントする

CAPTCHA

目次